名古屋高等裁判所 平成7年(ネ)437号 判決 1997年9月11日
名古屋市緑区青山一丁目二九番地
控訴人
森屋功夫
右訴訟代理人弁護士
西村諒一
名古屋市天白区植田南二丁目二二八番地
被控訴人
株式会社近江屋商店
右代表者代表取締役
丹羽昭治
右訴訟代理人弁護士
藏冨恒彦
右輔佐人弁理士
松波祥文
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一 控訴の趣旨
一 原判決を取り消す。
二 被控訴人は、控訴人に対し、四四七三万円及びこれに対する平成四年一〇月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え(控訴人は当審において差止め請求をいずれも取り下げた。)。
三 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
四 仮執行宣言
第二 当事者の主張
一 当事者の主張は、次のとおり加除・訂正するほか、原判決の事実欄「第二 当事者の主張」に摘示されたところと同一であるから、これを引用する。
1 原判決五枚目裏五行目の「大豆蛋白質」を「大豆蛋白」と改める。
2 同八枚目裏六行目の「本件特許権」から同八行目の「求めるとともに、」までを削る。
3 同一〇枚目裏三行目の「発明(二)の」の次に「シリコン油を混入した」を加え、同六行目の「必須要件」を「構成要件」と改め、同行末尾に「また、イ号方法及びロ号方法においては、予め六〇度以上の熱湯を混合することもしておらず、この点でも、本件発明(二)の構成要件を充足していない。」を、同一〇行目の次に行を改めて次のとおりそれぞれ加え、同一一行目の「(二)」を「(三)」と改める。
「(二)「仮に、『エマライト』にシリコン油が含まれているとしても、被控訴人は、これを消泡剤として使用しており、他の多くの豆腐製造業者も『エマライト』を消泡剤として使用しているのであるから、被控訴人は無過失である。」
4 同一一枚目表九行目の「被告」から同行末尾までを「被控訴人の使用しているエマライトの成分はシリコンを含め、本件発明(二)の苦汁分散剤と同一の成分である。」と改める。
第三 当裁判所の判断
一 当裁判所も、控訴人の本訴請求は、当審における新たな証拠調べの結果を斟酌しても理由がないから、これを棄却すべきものと判断するが、その理由は、次のとおり付加・訂正するほか、原判決の理由欄「一」及び「二」の説示と同一であるから、これを引用する。
1 原判決一二枚目裏四行目の「構成」の次に「要件」を加える。
2 同一四枚目表三行目の冒頭から同末行の末尾までを次のとおり改める。
「。そうすると、右エマライトにシリコン油が含まれ、かつ、これに六〇度C以上の熱湯が混合されておれば、イ号方法のa1及びロ号方法のa2の各構成要件は、いずれも本件発明(二)のA4の構成要件を充足することになる。
そこで、右の点について検討するに、理研ビタミン株式会社に対する調査嘱託回答書によると、同社は、エマライトの原材料及び製造工程においてシリコン樹脂は使用しておらず、かつ、同社が使用している原材料についてシリコン樹脂が添加された事実もないというのであるから、被控訴人がイ号方法及びロ号方法において使用しているエマライトにシリコン油が含まれている事実は認められないというべきである。
この点に関し、控訴人は、被控訴人が製造した豆腐からシリコン樹脂が検出されており、しかも、シリコン樹脂だけが消泡剤として作用し、グリセリン脂肪酸エステル自体には消泡作用はないとして、エマライトにはシリコン樹脂が含まれているはずである旨主張している。なるほど、証拠(甲二九、四六、四八、控訴人本人《原審》)によれば、控訴人がその検体が被控訴人の製造に係る豆腐であるとしてその成分分析を行った結果、その一部から二ppmないし九ppmのシリコン樹脂が検出されたことが認められる。しかしながら、右検体が被控訴人の製造に係る豆腐であったことを認めるに足りる客観的な証拠はなく、また、仮に、被控訴人の製造に係る豆腐であったとしても、右シリコン樹脂の検出量は微量である上、証拠(乙一〇)によると、ポリスケレンの豆腐容器にはシリコン樹脂が剥離剤として塗布されていることが認められることからすると、右の検出結果は、被控訴人がイ号方法及びロ号方法において使用するエマライトにシリコン樹脂が含まれていたことによるものとは必ずしもいえない。しかも、控訴人は、グリセリン脂肪酸エステル自体には消泡作用はなく、シリコン樹脂だけが消泡剤として作用する旨主張するものの、これを裏付ける証拠はなく、かえって、証拠(甲八一)によれば、シリコン樹脂とともに、グリセリン脂肪酸エステルにも消泡作用があることが認められるのである。以上の事情に照らすと、控訴人の右主張は採用できず、他に、被控訴人のイ号方法及びロ号方法による豆腐の製造工程においてシリコン樹脂が使用されたことを認めるに足りる証拠はない。」
3 同一四枚目裏一一行目の「構成」の次に「要件」を加える。
二 よって、これと同旨の原判決は相当であり、本件控訴はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 宮本増 裁判官 立石健二 裁判官小松峻は差支えにつき署名捺印することができない。 裁判長裁判官 宮本増)